ご相談者 | |
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年齢 | 55歳 |
性別 | 男性 |
職業 | 会社経営 |
事例の分類 | 企業型確定拠出年金、破産 |
ご相談内容
私は55歳男性の会社経営者です。私が経営する会社に多額の借金があり、もう会社をたたもうと思っています。私個人は、会社のメインバンクであるA銀行からの借り入れたものの連帯保証人になっています。これとは別に、会社の資金繰りのために、カードでキャッシングもしています。社員のために一生懸命がんばってきましたが、正直なところもう疲れてしまいました。
でも、社員のこれからの事はとても心配です。こんな結果になってしまいましたが、できるだけ、社員の為にやってあげたいと思っています。
実は、社員と自分の老後のために、会社の景気の良い時に、社員の退職金として、会社のメインバンクであるA銀行で確定拠出年金を始めました。会社からも掛金を毎月出し、社員も上乗せできるタイプのものです。社員の中には、会社が拠出したものに、個人で掛金を上乗せしている社員も大勢います。
この確定拠出年金はどうなってしまうのでしょうか?
会社から拠出したものは、A銀行の債権として相殺されてしまいますか?
社員の積み立ててきたお金はどうなってしまいますか?
とっても心配です。
ご相談でお話しした内容
ご相談ありがとうございます。それは心配ですよね。社員さん思いの良い社長ですね。
1つずつ整理をしていきましょう。
破産するのは誰か?
この場合は、破産手続きをするのは、会社と社長になります。
財産価値のあるものはどうなるのか?
法人は、破産によって消滅しますので、すべての財産は破産財団に属し、債権者に分配されます。
一方、個人の財産は、「破産財団に属するもの」と「自由財産」に分類されます。
預貯金や株式、生命保険や不動産などの財産、資産の多くは、おっしゃるとおり破産財団に属します。破産が認められ、破産開始決定が出た後、破産管財人によって、社長が借金をしている債権者たちに分配されます。
ところが、もう一方の「自由財産」というものには、破産者(社長)が自由に管理処分できる財産があるんですね。そのうちの1つが、差押禁止財産というものです。差押禁止財産とは、生活に欠くことのできない家財道具や、給料及び退職金請求権の4分の3等です。
確定拠出年金は、確定拠出年金法第32条で、「給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、または差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。」となっています。
したがって、確定拠出年金は差押禁止財産となり、自由財産に分類されます。だから、社長が自己破産をしても、会社が拠出した分も上乗せした分も差押されず、60歳になったら支給されますのでご安心ください。
社長は、免責決定を受ければ、破産前の債務を支払う必要はなくなります。
ただし、税金の滞納分など、免責の対象にならない一部債権は免責後も必ず支払わなくてはなりません。滞納税金を支払わなければ、たとえ差押禁止財産であっても差し押さえをされる可能性はありますからご注意ください。
社員の確定拠出年金はどうなりますか?
これらは、会社や社長の財産ではなくて、社員の財産ですから差し押さえはされません。
確定拠出年金のイメージとしては、60歳になったら引き出しができる社員個人の預金口座のようなものに積立をしていると思ってください。だから、会社が拠出したものも、すでに個人の預金口座に振り込まれてているので差し押さえされません。
ましてや社員さんの上乗せ分は、自分で自分の口座に振り込んだようなものなので、こちらも差し押さえされません。
解決のポイント
確定拠出年金で会社が拠出した掛金は、差し押さえされず、社員の年金として守られます。
社員の拠出した物も、会社が倒産しても守られ、社員の老後資金の年金として支給されます。
社長の想いを社員に伝えることができます。