ご相談者 | |
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年齢 | 50代後半 |
性別 | 男性 |
職業 | 自営業(個人事業主) |
家族構成 | 配偶者、子ども1人(結婚して独立している) |
事例の分類 | 個人型確定拠出年金(iDeCo)、破産 |
相談のきっかけ
私が経営している店を閉めようと思っていますが、確定拠出年金をしていたことを思い出しました。自己破産の法律相談だったのですが、ファイナンシャルプランナーがいる法律事務所ということで、さくら総合法律事務所にしました。
ご相談内容
私は、商店街で自宅兼店舗の呉服屋を営んでいます。しかし、昨今の着物離れにより、全く着物が売れません。心機一転、自宅兼店舗を大改装し、呉服屋を縮小させ、妻が洋服を売るようになりました。その時にメインバンクである地方銀行のA銀行に私名義の2,000万円の借り入れをしました。妻はその借り入れの連帯保証人になっています。その支払いがうまくいかず、カードキャッシングなどをして運転資金をまかなっていましたが、もう限界です。そろそろ店を閉めようかなと思っています。家族のために一生懸命がんばってきましたが、正直なところもう疲れてしまいました。
でも、家族のこれからの事はとても心配です。こんな結果になってしまいましたが、私と一生懸命がんばってきてくれた妻に、何もやってやれないのかと思い悔しい気持ちでいっぱいです。実は、私は個人事業主なので国民年金を払っています。自分の老後のために、厚生年金の代わりになればと、担当の銀行員に勧められ、10年前から個人型の確定拠出年金(iDeCo)を始めました。子どもの教育費もかかりましたので毎月大変でしたが、妻とともに3万円の掛け金をかけていました。
破産をすると、財産を手放さないといけないと聞きましたが、この確定拠出年金はどうなってしまうのでしょうか? A銀行に借金があるので、確定拠出年金はその借入金と相殺されてしまいますか? 私もそうですが、保証人となっている妻の積み立ててきたお金はどうなってしまいますか? とっても心配です。
ご相談でお話しした内容
ご相談ありがとうございます。それは心配ですよね。 1つずつ整理をしていきましょう。
破産するのは誰か?
この場合は、破産手続きをするのは、ご主人と奥さまになります。
自宅や車などの、財産価値のあるものはどうなるのか?
ちょっと専門的なお話になります。
個人の財産は、「破産財団に属するもの」と「自由財産」に分類されます。
預貯金や株式、生命保険や不動産などの財産、資産の多くは、おっしゃるとおり破産財団に属します。 自宅兼店舗はご主人名義になっていますので、残念ですが手放さなくてはなりません。 破産が認められ、破産開始決定が出た後、破産管財人によって、社長が借金をしている債権者たちに分配されます。
ところが、もう一方の「自由財産」というものには、破産者(ご主人と奥さま)が自由に管理処分できる財産があるんですね。そのうちの1つが、差押禁止財産というものです。 差押禁止財産とは、生活に欠くことのできない家財道具や、給料および退職金請求権の4分の3等です。 確定拠出年金は、確定拠出年金法第32条で、「給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。」となっています。 よって、確定拠出年金は差押禁止財産となり、自由財産に分類されます。ですから、ご主人と奥さまが自己破産をしても、確定拠出年金も国民年金も差押されず、60歳になったら支給されますのでご安心ください。
社長も奥さまも、免責決定を受ければ、破産前の債務を支払う必要はなくなります。借金は帳消しになりますが、60歳を過ぎたら、確定拠出年金は支給してもらえるので、安心ですね。
ただし、税金の滞納分など、免責の対象にならない一部債権は免責後も必ず支払わなくてはなりません。支払わなければ、たとえ年金であっても差し押さえをされる可能性がありますからご注意くださいね。
奥さまの確定拠出年金はどうなるのか?
奥さまも連帯保証人となっているので、破産手続きをしなければなりません。 奥さまもご主人さま同様、確定拠出年金は、奥さまの財産ですから差押はされません。 確定拠出年金のイメージとしては、60歳になったら引き出しができる個人の預金口座のようなものに積立をしていると思ってください。 なので、奥さまの確定拠出年金も守られて、老後の資金として役立てていただけます。
解決のポイント
確定拠出年金で拠出した掛金は差し押さえされず、個人の年金として守られます。
自己破産をしても守られ、自分の老後資金の年金として支給されます。ただし、税金の滞納がある場合は、差押をされる可能性がありますから、ご注意ください。