ご相談者 | |
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お名前 | Aさま |
年齢 | 55歳 |
性別 | 男性 |
職業 | 会社経営者(建設業) |
家族構成 | バツイチのため現在独身、娘28歳(結婚し独立)、息子24歳(会社後継者) 内縁関係の女性30歳、子ども(胎児) |
事例の分類 | 個人型確定拠出年金(iDeCo) |
相談のきっかけ
婚外子について、悩んでいることがあります。以前、夫婦問題のブログでFPの竹内美土璃さんの書かれた記事「婚外子の認知の話」を拝見しました。私の場合は「認知」をする予定でいますが、お金のことだけでなく、離婚や相続などいろいろなケースを見ておられる竹内美土璃さんならどのような解決策をご提案していただけるのかと思い、本日お伺いしました。
ご相談内容
私は10年前に離婚をし、前妻との子どもは2人(息子と娘)とも成人し、今は一人で暮らしています。私には交際している女性(M)がいて、その女性との間に子どもができました。その女性は、鹿児島出身の子です。私は仕事人間で、そばについて何もしてやれないので、二人で相談した結果、出産は彼女の実家である鹿児島ですることになりました。彼女は、現在は実家に帰っています。出産後は名古屋に戻ってもらい、その女性と子どもと一緒に生活していく予定です。
ただ、すごく気の重い問題がたくさんあります。
まずは、息子と娘は、私に内縁関係の女性がいる事、ましてやその女性との間に子どもがいることは、まだ知りません。
大変なことは、まだあります。私は父の代から続いている建設会社を経営しておりまして、私の24歳の子どもが三代目として私の建設会社を継いでくれることになっています。そのため今は取引先の会社に修行に行っており、来年の3月に修行を終えて、当社に戻ることになっています。息子が会社に戻ったら、本格的に事業承継も考えていかなければなりません。
トラブルになるのは目に見えているので、本当に胃が痛いです。
M(内縁関係の女性)といるとほっとするし、Mや子どもの将来のことも考えると、きちんと籍を入れてやるのが一番だと思いますが、それがかえってM(内縁関係の女性)や前妻の子どもたち(二人の子どもとMと胎児のこと)を苦しめることになりやしないかとも思っています。
会社の事業承継と、私個人の相続(二人の子どもとMと胎児のこと)のことなどの色々な事情を考えると、どうしたらいいのかわからなくなりました。悩んでいたところ、たまたま竹内美土璃さんのコラムを見て、何かいいヒントがもらえそうな気がしましたので伺いました。
ご相談でお話しした内容
Aさま、本日はお越しいただきましてありがとうございます。
なかなか難しい問題ですね。でも、お力になれるよう、アドバイスをさせていただきますね。
まずは、Aさまのご希望をまとめてみます。
Aさまのご希望
- Mさま(内縁の妻)と生まれてくるお子さまの将来の事が心配。
- 前妻の子達にMさまとお子さんの事をどう話したらいいのか。
- 会社の事業承継について。
- Aさま死後の相続争いについて。
ですね。
では、まずは、Mさまと「結婚した場合」と「結婚しなかった場合」を比べてみましょう。
Mさまと結婚をした場合
Aさまは、本当は生まれてくるお子さんのために、Mさまと結婚して差し上げたいと思われているんですね。ただ、長い目で見た場合、果たしてこれが幸せなのかということを考えていらっしゃるご様子。
確かに、Mさまとご結婚された場合、問題になることはたくさんあります。一番大きな問題は、「相続」でもめることになるでしょう。
まずは、結婚された場合の法定相続分を見てみましょう。
結婚された場合、MさまがA社長の財産の1/2を受け取ることになります。それだけでももめごとの要因に。しかし、会社の後継者は24歳の息子さんです。そうなると、事業存続のため、財産を一番息子さんに渡したいですよね。A社長の財産のうち、おそらく会社の株式がとても大きな割合を占めることになります。よって、結婚をすると、円満な相続はちょっと難しくなります。
Mさまと内縁関係を続けた場合
Mさまと婚姻せず内縁関係を続けた場合の相続分は下記の通りとなります。
相続分は子どもたちだけになりますので、三人で均等に分けることになります。そうなると、お子さんたちの相続分がぐっと増えますが、Mさんには相続財産を残せないことになるため、それが気がかりになりますね。
さらに事業承継を考えると、A社長が「遺言」を書くことは必須です。1歳の息子さんと28歳の娘さんに遺留分を満たす財産を相続させる遺言があれば、遺留分の争いになることはありません。
前妻の子たちにMさんとの間の子のことを隠しておけるのか?
「転籍」をすれば認知をした事実を隠すことができるという人もいますが、認知した事実が転籍後の戸籍に転記されないだけで、結局、相続手続きをするときに転籍前の戸籍も取り寄せて相続関係を調査するので、認知した子の存在は明らかになってきます。詳細は、以前、筆者が書いた記事をご参照ください(認知した子の存在を隠し通し、子どもたちが相続でもめない方法はありますか?)。
よって、方針がしっかりと決まってから、お子さんには早めにお知らせすることをお勧めいたします。
Mさま(内縁の妻)と生まれてくるお子さまの将来の事について
こちらについては、「相続」ではなく、別の視点で考えていきたいと思います。
A社長はMさまと生まれてくるお子さんと同居されるおつもりですよね?それならば、たとえ結婚していなくても、MさまはA社長の扶養に入ることができ、第三号被保険者になることができます。加えてAさまの死後、MさまがA社長の遺族年金を受け取ることができます。
具体的な数字に置き換えてみてみましょう。
Mさまが30歳からA社長の扶養に入り、第三号被保険者となっているとします。下記ねんきん定期便のサンプルを見ると、A社長が老齢厚生年金を年額180万円(前の奥さまとの年金分割後の金額)を受け取ることができます。そして、Aさまが30年後の85歳で亡くなったと仮定しましょう。また、A社長が亡くなった時、Mさまは60歳で同じく85歳で亡くなったとして考えていきます。そうすると、Mさまは、A社長の死後、遺族厚生年金として、A社長の老齢厚生年金の3/4を、Mさまが遺族老齢年金として受け取ることができます。
これを元に、この時のMさまが受け取ることができる遺族年金は下記の表のとおり計算することができます。
年齢 | 年間 | 年数分の合計 | |
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遺族年金 | Mさまが60歳から65歳まで | 45万円+135万円=180万円 | 180万円×5年=900万円 |
Mさまが65歳から85歳まで | 60万円+135万円=195万円 | 195万円×20年=3,900万円 | |
合計 | 375万円 | 4,800万円 |
このように、遺族年金4,800万円と、65歳からはご自身の老齢基礎年金を受け取ることができます。
Mさまは相続でたくさんのお金を主張しなくても、遺族年金として4,800万円はもらえるます。それでも足りないなと思われるのであれば、Aさまが生前中にMさまの口座に貯蓄をしておきましょう。そうすれば、あえて相続財産を主張しなくても、Mさまは生活していけるだけの資金を得ることができます。
解決のポイント
いかがでしたでしょうか?
Aさまの場合は、相続のことまで考えていかなければなりません。まずは、ご長女さんとご長男さんに、生まれてくるお子さんとMさまのことを話す時に、遺言を作成し、ご長男とご長女さんを安心させてあげてください。その際は、弁護士をご紹介させていただきます。
また、合わせてMさまの生活が困らないようにして差し上げましょう。また、内縁関係を認めてもらうのはちょっと大変です。民生委員に証明してもらうなど、手続きが必要です。
最後に、今回は、私が予想して概算で計算しましたので正確な数字ではございません。次回はねんきん定期便をお持ちいただけますか?もう少し、しっかりと調べ、正確にお伝えさせていただきたいと思います。 Aさま死後、Mさまが亡くなるまで住む家なども、「家族信託」を使えば、より争族を避けることができます。
ご事情をご存じない、ご長女さんとご長男さんの気持ちをまずは考えて差し上げたいので、長い期間をかけての対策が必要になってきます。Aさま亡き後、残された者たちが争族にならないよう、さらにご提案をさせていただきます。
方法は色々あります。一緒にがんばっていきましょう!