ご依頼主 | |
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企業形態 | 株式会社 |
業種 | 日用品卸・販売 |
事例の分類 |
事例の概要
ご相談内容と状況
依頼者A社は日用品の卸・販売をしている株式会社で、自社の直営店で日用品を販売するほか、ホームセンターで商品の販売をしていました。
A社の従業員であったBは、営業担当として、ホームセンターを回ってA社の新製品を売り込んだり、A社の試供品や販促用のチラシやパンフレットを置かせてもらったりする営業を担当していました。
Bは、Bの所属するA社の営業所の隣県のホームセンターを受け持っており、ホームセンターを訪問する日は自宅から直行直帰でホームセンターへ行き、営業をしていました。
A社の給与規定には「従業員に支払われる職能資格給には25時間分の時間外勤務手当を含むものとする。」との規定がありました。
Bは、ホームセンターへの訪問時間に遅刻したり、指示されたホームセンターへの訪問を怠るなど勤務態度に問題があり、上司が注意したところ、出勤しなくなり、そのまま退職してしまいました。
その後、Bから未払残業代200万円の支払いを求める内証証明郵便がA社に届き、対応に困ったA社の代表者から当法律事務所に相談がありました。
弁護士の対応
当法律事務所の弁護士が代理人となり、Bに対して残業代200万円の算出根拠である残業時間について問い合わせましたが、Bは資料の提示を拒み、訴訟を提起してきました。
裁判ではBは日にち毎の残業時間を明らかにし、根拠資料として日記帳を証拠として提出してきました。
A社と協力してBの主張を検討し、欠勤日を出勤したと主張している日や、自由参加の社員旅行が出勤日として残業代も発生したと主張している日などがあることを明らかにして否認しました。
また、Bの主張では職能資格給に含まれていると規定されている時間外勤務手当を差し引いていないことから、差し引くべきだとして未払い残業時間を争いました。
結果
裁判官から和解の勧告を受け、Bの主張した200万円の半額以下である90万円の解決金を支払うとの内容で和解が成立しました。
解決のポイント
裁判で、Bがあまりに過大な残業代の請求をしたことが、裁判官の心証を損なったという面があったと思われます。
A社にも、残業時間の把握が不十分であったことや、職能給に残業手当を含むとの規定の曖昧さなど不利な要素がありましたが、裁判では裁判官の質問に誠実に答えたことがA社に有利な心証形勢につながったものと思われます。
残業時間のチェック体制の確保や、就業規則の整備などをしていれば、このような労務トラブルに発展することもなかったのではないかと思われます。
残業はきちんと管理しなければ未払残業代がかさんでしまい、経営を揺るがすことになりかねません。
未払残業代発生に備えて、健全な経営を目指していただきたいと思います。
未払残業代トラブル回避は、労務問題に強い弁護士など専門家に相談されることをお勧めします。