前回のコラムでは、「争族」が増えている背景についてお話ししました。
長い間、つながりがあった者同士の争いほど感情的対立に発展しやすく、関係が近いほど対立は深くなります。
「争族」は、離婚や同族会社の争い、相隣関係をめぐる争いとともに、感情的対立に発展しやすい事件の典型です(「相隣関係」というのは、界争いなど、隣同士の争いのことです)。
「争族」は、何年、何十年つきあってきた者同士の争いです。
お互いへの日頃の不満や不公平感が争族の機会に噴出し、ぶつかり合い、感情的対立に発展してしまいます。
親の介護、家業の承継、学歴や所得の違い、以前の兄弟げんかや親子げんかなど、さまざまな事柄が「争族」を激しくする原因になります。
さらに「争族」を激しくする原因とは?
遺産分割で考慮されることになる特別受益や寄与分も「争族」を激しくする原因になります。
特別受益
共同相続人の中に、被相続人から遺贈や一定の贈与といった特別受益を受けた人がいる場合には、その相続人の取り分は少なくなります。
そこで、遺産分割の際に、他の相続人に特別受益があったと主張することになります。
「お兄ちゃんだけ大学に行って、私は行かせてもらえなかった。大学の学費は特別受益になるはずよ。」
「お前だって結婚したときに親父に嫁入り道具を買ってもらったり、持参金を出してもらったじゃないか。」
何十年も昔の話を持ち出されては、お互い感情的になってしまいます。
寄与分
共同相続人の中に、被相続人の財産の維持・増加について特別の貢献をした人がいる場合には、寄与分としてその相続人の取り分は多くなります。
そこで、遺産分割の際に、自分に寄与分が認められると主張することになります。
「親父が病気になってから俺たち家族が介護してきた。介護費相当額の寄与分が認められるべきだ。」
「親父は入院するまで元気だったし、入院した病院は完全看護だったから、兄貴たちに特別の貢献があるとは思えない。」
反論されたら、感情的になるのは必至です。
まとめ
いったん激しい「争族」が起きると、親族が再び良好な関係を取り戻すことは困難です。
あなたが亡くなった後、親族が対立し、憎しみ合うことがないように、争族対策を行い、遺言を作成することが大切なのです。