このところ、相続をめぐる争い=争族が増えています。どうして争いが増えているのでしょうか。
相続争いが増えている理由は?
家族の変化
まず考えられるのは家族の変化です。
「イエ」制度があり、原則として長男が家督相続をしていた時代には、跡取りが財産を引き継ぐのが当たり前でした。家督相続制度は昭和22年の民法改正で廃止されましたが、これ以後も長く私たちの意識、常識として残っていました。
しかし、近年「イエ」への帰属意識が低下し、現在では跡取りが全ての財産をもらう制度へ違和感を感じる人が多数になっています。
権利意識の変化
次に考えられるのは権利意識の変化です。
家族を第一に考える家族主義から自分自身の利益・幸せを第一に考える個人主義へ意識が変わってきています。「イエ」に遠慮せず、個人の権利を主張することに抵抗がなくなっています。
跡取りが自分を犠牲にしてまで兄弟姉妹・親族を助けることのない世の中なら、跡取りが財産を全て引き継ぐのに対して他の相続人が異議を述べるのも当然です。
社会・時代の変化
社会・時代も変わりました。
「一億総中流化社会」から「格差社会」に、「繁栄・成長の時代」から「不確実な時代」になっています。
大きな会社に勤めていても、明日倒産するかもしれませんし、リストラされるかもしれません。終身雇用、年功序列賃金制も過去のものになりつつあります。公務員でさえリストラ、ベースダウンされる時代です。
子どもの教育にもお金がかかりますし、年金もこれまでのようには支払われそうにありません。
今の不安、老後の不安を考えると、「もらえるものはもらっておきたい」と考えるのも無理ありません。
そして現在は情報化社会です。
テレビ、ラジオの情報番組で相続問題が取り上げられることも多いですし、本屋に行けば遺産分割をテーマにした雑誌、書籍がいくつも並んでいます。
インターネットにアクセスすれば、いつでも無料で欲しい情報が手に入ります。インターネットで検索して「法律的にはこれだけの権利があるはずだ」「提案された遺産分割案はおかしいのではないか」と気づかれる方も多いのではないでしょうか。
まとめ
このような背景から、相続の争いが近年増えているのだろうと思います。
ご自分のお考えと、お子さま・お孫さまの世代のお考えが違うことに気づかず、「争族」の種を遺すことになれば、大変残念なことです。ご自分の死後にご家族が仲良く暮らしてもらえるように、遺言を残すなど、「争族」に備えることがますます大切になっているのです。