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セミナー報告

日本相続学会東海ブロックオープンセミナー「女の相続―相続は女性が中心になる―」開催報告

2023年2月2日(木)に、一般社団法人日本相続学会東海ブロックオープンセミナーが開催されました。

日本相続学会 会長 伊藤久夫氏の挨拶の様子
税理士 本郷尚先生の講演の様子

講演の内容

税理士の本郷尚先生(税理士法人タクトコンサルティング税理士、株式会社タクトコンサルティング顧問)を講師にお招きし、女の相続―相続は女性が中心になる―をテーマに講演をおこなっていただきました。

第1部

第1部では、「相続対策より生存対策(しあわせ対策)」についてお話ししていただきました。

子より親の相続対策を優先し、その対策は子の目線ではなく、親や妻の目線で考えるべきであるとおっしゃっていました。
相続対策と聞くと、相続税の対策と考えがちですが、それは子の目線であり、親の目線から考えると夫婦の幸福や老後の生活など生存対策が相続対策の重要なポイントになります。

また、遺言書は必ず書くべきだとおっしゃっていました。
公正証書遺言は作成費用がかかりますが、そこは惜しまず作成し、附言事項として理由や気持ちを伝え、夫婦が中心となる内容が望ましいということでした。
長寿社会となった日本において、相続後の妻の生活の安定と立場の確保を最優先に考えていくことが大切です。

第2部

第2部では、「家督相続への対応」についてお話ししていただきました。

事業承継税制の活用として生前退職をすることでタテとヨコの相続をし、不公平を円満に解決することが大切だとおっしゃっていました。
タテの相続は、社長である父が株式を後継者の子に贈与し、ヨコの相続は、高額な退職金を自らが決定して受取り妻に受け取らせることです。
退職金は妻のほかにも、後継者の弟、姉、妹にも贈与、相続することが円満に解決するポイントになります。

まだまだ元気、生涯現役、息子には任せられないなどの気持ちで引退を決めかねていると、気付いた時には身体が弱くなって病気になったり能力が衰えたり、適格な判断能力がなくなり、意思決定者が自分ではなく、後継者へと移ってしまいます。
これは最悪のケースを招きかねないとおっしゃっていました。

決断の決め手は、人生と仕事の「中締め」をする、退職金で「ケリ」をつける、会社と仕事は「外から」見つめる、後継者を「外から」見守る、「自由」に動き出す、これらのことが大切だとおっしゃっていました。

第3部

第3部では、「奥様100人に聞いたアンケート」をもとに本郷先生の実務経験のお話ししていただきました。

多くの奥様は、現物の不動産や自社株式の相続にはあまり関心がなく、運用や経営の経験がない場合ほど、顕著な傾向であるそうです。
また、アンケート結果によると、「ご主人が亡くなる際に最も残して欲しいものは」という質問に対して約半分の方が「現金や預金」という回答で、「ご主人が亡くなる際に残されて最も困るものは」という質問に対して約3割の方が「経営する会社の株式」、約1割の方が「美術品や骨董品」という回答になったそうです。

女性の本音は、分からないものは不要、生前に整理して欲しい、会社や資産より個人と家族が大事、自分が使えないものは財産ではない、ということだとおっしゃっていました。

感想

当法律事務所 代表弁護士 竹内裕詞のご案内の様子

多くの資料をご準備いただき、実際の経験を踏まえた内容で、とてもわかりやすく講演いただき大好評でした。
「贈与」は心のキャッチボールであり、公平に、平等に、堂々と贈与することが重要というお話しが印象的でした。贈与する側は、何よりも喜ぶ顔が見たいという気持ちで贈与をするので、贈与を受ける側は、その気持ちをしっかりと受け止め、「ありがとう」という感謝を何度も伝えることが大切だということを学びました。
本郷先生、素晴らしい講演をありがとうございました。

この数年、コロナ渦により会場参加の方が減少傾向にありましたが、少しずつではありますが会場へ足を運んでくれる人数が戻ってきて、みなさんと直接お会いできる喜びを感じています。今後も多くの方に安心してご参加いただけるよう取り組んでいきます。

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