2017年12月8日(金)開催の一般社団法人日本相続学会東海ブロックオープンセミナーでは、司法書士法人アスネットの寺町敏美先生を講師にお招きし、新たに始まった「法定相続情報証明制度について」をテーマに講演をしていただきました。
法定相続情報証明制度とは?
2017年5月29日(月)から新たに始まった制度なので、どのようなものなのか知らないという方もいらっしゃるかもしれません。
法務局に必要書類等と合わせて申請することで、登記官が法定相続人が誰なのかを証明してくれる制度です。これまでは銀行や証券会社などでの相続手続きをする際、各機関で提出書類は異なりますが、たくさんの戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明等を揃えて提出する必要がありました。それがこの新たな制度により、各種相続手続に使用することができる法定相続情報を作成してもらえるので、法定相続人が誰なのかを明らかにする為の書類を一部簡略化することができることになりました。
では、「法定相続情報証明制度」の内容を少しみていきましょう。
法定相続情報証明制度が始まった理由
この制度が新たに始まったのは、負動産問題や空き家問題など、不動産に関係する問題を解決していくというのが大きな要因となっています。
近年、相続登記をしないまま放置されている不動産が増加し、これが所有者不明の不動産や空き家が増加する原因となっています。
この問題の解決策として期待されているのが「法定相続情報証明制度」です。相続が発生した場合に登記をする側の負担を軽くして、相続登記を促すことが狙いです。
法定相続情報証明制度の手続の流れ
手続の流れは、必要書類を集めて、法定相続情報一覧図を作成し、申出書を登記所へ提出します。必要書類は被相続人や相続人の戸籍謄本等です。手続の内容によって異なりますので、法務省の「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」を参考にしながら、登記所へ直接連絡をして確認をするのが良いでしょう。
申出をする登記所は、以下の地を管轄する登記所の中から選択できるので、郵送でも窓口でも申出手続きをスムーズにおこなうことができます。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
また申出手続は申出人の親族だけではなく、弁護士、司法書士、税理士などの資格者に代理人を依頼することもできます。発行費用は無料なので、手続に必要な通数を交付または再交付申請することができます。
今後の課題
まず、相続手続に法定相続情報を使用する場合に気を付けなければいけないことが、法定相続情報には法定相続分や相続放棄などに関する記載はされないという点です。実際に法定相続情報をみてみると注釈として「相続放棄に関しては、本書面に記載されない。」とあります。あくまでも法定相続の基本的な情報が記載されるに過ぎないということになります。
次に、完成した法定相続情報の内容に誤りがあったとしても訂正をすることができないという点です。訂正を必要とする箇所がある場合は、訂正箇所のみ申出をすることはできず、もう一度はじめから申出手続きをしなければなりません。申出書を提出する際に作成した法定相続一覧図は、登記所において5年間保管されるのでその期間内の再交付に関しては再交付申出書により可能です。
そして、この制度を利用できるのは相続人全員が日本国籍であることを要するという点です。相続人の中に外国籍の人がいる場合は申出手続きをすることができません。国際化の進展により国際結婚は珍しいことではなくなったため、外国籍の人も相続人の中に存在することも希ではないと思います。
まとめ
このように「法定相続情報証明制度」について現状と問題点について貴重なお話しを聴くことができました。
新たに始まった制度なのでまだわからない部分も多々あると思います。
今後の課題も含めてより一層、相続人となる誰もが利用しやすく、かつ安心して利用することができる制度に進化していくことが望まれます。